ミシャ:ライナー、あんな大きな鉄骨持ってて どうするつもりなの?
ライナー:え?どうするって、もちろん使うけど?
ミシャ:だったら、早いとこどうにかして使った方がいいよ。
ミシャ:正直、あんな重たいもの持ってあっちこっち旅するの大変でしょ?
ライナー:ま、まぁ、確かにそうだけど・・・
ミシャ:じゃあ、決まりね。さっさとグラスメルクに使っちゃってよね。
ミシャ:あのね、ライナー。もしかしたらこんなこと言ったら嫌われちゃうかもしれないんだけど、聞いてくれるかな?
ライナー:ちょ、ちょっと怖いけど、何?
ミシャ:うん・・・実は私、誰かのために何かをするっていうの?あれ、もの凄く大嫌いだったの。
ミシャ:人のために何かをするよりも、まずは自分自身の方が大切じゃないか、って思っててね・・・。
ライナー:そうだったのか・・・。でも、俺に対しては最初から優しかったし、色々してくれただろ?
ライナー:どんな理屈かはわからないけれど、まぁ、ありがたいからいいか。
ミシャ:うふふ・・・でもね、最近になって少し自分が変わってきたみたいなの。
ミシャ:あれだけ人のために何かするのが嫌いだったはずなのに。その考えが少しだけ薄くなってきてるような気がする・・・
ミシャ:あ〜あ、それにしても残念・・・
ライナー:残念って、何が?
ミシャ:月の試練よ。私だけ居残りの状態でやるなんて、ズルイわ。
ミシャ:私とライナーで組んだ方が、きっと楽にクリア出来たと思うし。
ミシャ:それに、再会したあの時みたいに、また二人だけってのも味わいたかったのに・・・
ライナー:二人で天覇の警備兵を蹴散らしながら逃げたあの時みたいにか?
ミシャ:そうよ。でも、あの頃よりも私、格段に強くなったわ。今ならフラウトなんか瞬殺・・・
ライナー:え!?
ミシャ:じゃなかった、一撃で蹴散らすことだって簡単よ!
ライナー:・・・フラウトさんのためにも、あの時はオリカと組んで正解だった気がしてきたよ。
ミシャ:ん?
ライナー:どうした?
ミシャ:あ、うん。今、足音が聞こえたからさ、誰かがここに来るのかと思って。
ライナー:今のは違うみたいだけど・・・ でも、別にそんな神経質にならなくてもいいんじゃないか?
ミシャ:まあ、そうなんだけど・・・
ミシャ:でも、今は私がライナーと一緒にいるの。 だから、その時間を邪魔されたくないのよ。
ミシャ:・・・あ、そうだ! 確かイナイイナイ持ってたよね? あれ、つけてみようよ。
ライナー:意味がないだろ、こんなところでつけたって。
ライナー:あれ、敵に対して効果があるものなんだぞ?
ミシャ:ああ、その点についてなら全然OKよ。
ミシャ:だって、二人きりの時間を邪魔するものを敵と言わないで、何て言うの?
ライナー:・・・なんか、微妙に間違ってる気がするんだけど?
ミシャ:そういえばさ、クレセントクロニクルって結局全部見れてないわね。
ライナー:そうだな。特に奥の方にある銀色のフェンスは、相当頑丈そうだしな。
ライナー:あの奥には、塔の重要な機密があるのかもしれないな。
ミシャ:・・・果たして、本当にそうかしら?
ライナー:な、なにが?
ミシャ:私の勘だけど、あの扉の向こうには何かすごいお宝があるんじゃない? どうも臭うのよね・・・。
ライナー:そんな気になるならタスティエーラに開けてもらったらいいんじゃないか?
ミシャ:・・・それは無理だと思う。 目に頼んだことあるもん、私。
ライナー:断られたのか?
ミシャ:うん。小さい頃なんだけど、やっぱり気になってね。それで頼んでみたの。
ミシャ:そしたらタスティエーラ、凄い取り乱して、ここはダメだ、って・・・。
ライナー:・・・そ、想像できないぞ、それ。
ミシャ:あんなタスティエーラを見たの、後にも先にもあれっきりよ・・・ ね、気になるでしょ?
ライナー:でも開けてもらえなさそうだし、気になるから聞くんじゃなかったと後悔してるよ。
ミシャ:それにしても、まさかクレセントクロニクルを見られることになるなんて思わなかったな。
ミシャ:それも私がいたあの部屋を見られるなんて・・・ なんか、ちょっと恥ずかしかったかも・・・。
ライナー:え?そんな恥ずかしがるようなものなのか?
ミシャ:だってあそこ、私の故郷っていうか、家みたいなものだから。
ミシャ:ずっとあの中だけで生活、っていうか、謳ってただけだけどね。
ライナー:あ・・・そうだったよな。
ミシャ:まあ、出来ることならあまり戻りたくない故郷ではあるかな。
ライナー:そういや、昔はレーヴァテイルが人口の30%を超えるほどいたとか言ってたよな?
ミシャ:え?うん、とはいっても、かなり昔の話だけどね。
ライナー:想像付かないな。そんなに大勢のレーヴァテイルがいただなんて・・・。
ミシャ:そう? でも、私は昔より、今の方が良かったかも。
ライナー:え、どうして?
ミシャ:だってそんなに沢山いたら、優しすぎる誰かさんがあっちこっちで色んな親切しそうだからね。
ミシャ:そうなったらライバル増えて、競争率高くなっちゃうし・・・。
ライナー:おいおい、一人で何言ってるんだ? まったく話が見えないんだけど・・・。
ミシャ:・・・まあ、だとしても呆れるほどの鈍感なことは変わらないか。
ミシャ:それにしても、あの嵐の中の対空岸壁は、思い出すだけでも怖いわ。
ライナー:ああ、それには同感だ。
ミシャ:ちょっとでも力を抜いたらそのまま空に飛ばされるんじゃないかと思ったしね。
ミシャ:本気で泣きそうになったわ。
ライナー:あそこって手すりも何もないからな。 体が押されて動いたら、完璧に落ちてたな。
ミシャ:・・・う、そ、想像しちゃったじゃないの、バカバカバカ!!
ライナー:ご、ごめんごめん。 でもほら、もう大丈夫だって。
ミシャ:うう・・・なんだか、対空岸壁がトラウマになりそう・・・。
ミシャ:ねえ、ライナー。 私ね、ライナーの趣味は良くわかってるつもりなの。
ミシャ:でも、マジカルシャワーを着るのはちょっと恥ずかしいよ。
ミシャ:私、こんな外見でも二十歳近いんだからさ・・・。
ライナー:そのことについては謝るけど、サラッと俺の趣味がどうとか言ってなかったか?
ミシャ:それだけ酷い目にあってるんだもん。 前に変なお兄さん達に見られたときとか、凄い怖かったんだからね。
ミシャ:気づいてなかったかもしれないけど、しばらく後をつけられてたんだよ?
ライナー:な、マジかよ!?
ミシャ:もう、しっかりしてよ! そうじゃないと怖くて、もう着られないよ。